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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「ウム」

と、うなずいたのは和田呂宋兵衛である。

蚕婆と丹羽昌仙のふたりを相手に、さいぜんから酒を飲みながら、だれかのくるのを待ちあわせていたらしい。

「一同、ご微行だろうな」

「へい、ぞろぞろと編笠が七ツばかり、いま、階下の門口へはいってきました」

「じゃあ、お迎えに」

と目くばせすると、丹羽昌仙が立ちあがって階下へ降りてゆく。

間もなくそこへあがってきたのは、隠密組の菊池半助、おなじ組下の綿貫三八、それに今度の兵学大講会に試合目付として働いている大久保長安の家臣が四、五人――ただし、そのなかには客分格の鼻かけ卜斎がまじっていて、そのまたうしろには泣き虫の蛾次郎、鼻をふいてひかえていた。

そこでゾロリと車座になった。

ここに首を寄せあつめたものは、みな徳川家の息がかかっている者ばかり。なにかしらないが、話はあしたの相談とみえて、一間をピッタリ閉めきった。

「およそ、明日の試合順はきまりましたかな」

と、呂宋兵衛がしきりに気にかけている。

かれはこんどの大講会で、南蛮流幻術の秘法をもって、日本伝来の道士がやる法術の幼稚拙劣なことを公衆にしめしてやると、浜松を立ってくるとき、家康のまえで豪語してきた。