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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「ほウ、では、最初は築城試合でございますかな」
「昨年はそうであったとうけたまわる」
「陣法勝負などの場合は、やはり、論議だけでございましょうか」
「足軽何百人ずつを借用して、じっさいの陣あらそいになる場合もある」
「壮観でござりましょうな」
と、小文治はわかわかしい目をした。
伊那丸はふたりの話を小耳にはさんで、
「わしのおさないころは、なおさかんなものであった」
と、とおい思い出を呼ぶ。
「さようでござりましょうとも、信玄公ご在世のころからくらべれば比較にならないと、町人たちもささやいております」
忍剣も恵林寺にいたころ、一年、その盛時を見たことがあるので追憶がふかい。
「おもえばむねんしごくな!」
とつぜん、龍太郎がこうふんした口調で、
「お家の行事もいまは徳川に奉行されて、御岳の神前に武田菱の幕一はり見えませぬ」
と、つよくいった。
「しかし、かりにお家のかたちは滅尽するとも、ここに武田の人あることを知らせてくれたい」
と蔦之助もそれに応じる。
忍剣は伊那丸の前へズッとよって、なにかうごかぬ決意をしながら、
「若君、昨夜もお願いいたしたとおり、兵法大講会は故信玄公が甲斐の武風をあくまで天下にしめされた行事、われわれが生涯の思い出ともいたしとう存じますゆえ、なにとぞ大講会参加の一闘士として飛びいりおゆるしくださいますよう