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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
のりとをあげた祭壇の神官、そのとき、バサッと幣をきって、直垂の袖をたくしあげ、四方へ弦をならす式をおこなってから紫白ふた色の細かい紙片をつかんで、壇の上から試合の広庭へ雪のようにまきちらす。
――この大講会に血を見るなかれ!
――この大講会に邪兵をうごかすなかれ!
という意味をふくむ神地きよめの式である。
この式がすむと同時に、大講会三日のあいだは、ぜったいにこの場では平常の敵味方をわすれ、仇なく怨みなく、たとえ隣国と交戦中でも、三日間は兵戈をおさめて待つというのが武門のとうぜんとされている。
黄色いけむりが空へ走った。
狼火である。
群集の目がそれへつりあがると、また、寂とした大地を、かつかつと駆ける馬蹄の音がおこっていた。
三騎の騎馬武者――。
これははなやかな甲冑陣太刀のよそおいで、黄母衣、白母衣、赤母衣、を背にながし、ゆるい虹のように場内を一周した。
これ、母衣組目付の番組ぶれで、すべて武田流の作法どおりにおこなわれるものと見える。
さて。
いよいよ第一日の一番試合は、太子流の強弓をひく氏家十左衛門と、大和流の軟弓をとっての名人長谷川監物との射術くらべで口火を切ることになった。