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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

これは腕の試合ではない。

舌の試合である。築城学論議である。

群集は目よりも耳をすました。

水を打ったようにしずまって、論議いかにと咳声もしない。

鼻かけ卜斎の上部八風斎、やおら肩をはり、軍扇いかめしく膝について声たかく、

「築城に四相あり、いかに?」

と、第一問をだした。

村上賛之丞、莞爾として、

「兵法に申す、小河東にあるを田沢といい、流水南にあるを青龍とよび、西に道あるを朱雀と名づけ、北に山あるを玄武、林あるを白虎と称す」

「して、地形をえらぶには」

「北高南低は城塞の善地、水は南西にあるを利ありと信ず」

「三段の嶮と申す儀は」

「天嶮、地嶮、人嶮のこと」

「山城の見立ては」

「地性水質によること、空論にては申されぬ」

とはねつけて、こんどは賛之丞から卜斎にむかって反問をあびせかけた。

「いかに? たとえばこの御岳の山に一城をきずく節は?」

「むろん山城なれどいただきをきらい、中庸の地相に郭をひかえ、梅沢のすそに出丸をきずき、大丹波には望楼をおき、多摩の長流を濠として、沢井、二俣尾に木戸をそなえれば、武蔵野原に満つる兵もめったに落とすことはできない」

「あいやしかし!」