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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「さあ、なんとおっしゃるか、おそばにおいで遊ばすから、おのおのがたじしんでお願いしてみたらよかろう」

と、しごくアッサリしている。

「いかんわい」

と、忍剣は頭をかいて、龍太郎の脇の下をソッと突ッついた。

「おい、後生だ」

「なにが?」

「尊公から若君へお願いしてくれ。だれにしたって、ここで一番日ごろの鬱憤を晴らして、腕の夜泣きをなぐさめてやりたいのは、人情じゃないか」

「そりゃ、拙者にしても、木隠流の戒刀をおもうぞんぶんふるってみたいのはやまやまだが」

「だから……尊公から若君へちょっと」

「む……ウ……」

と、口のうちで返辞をしたが、冷々と、あらぬかたへ眸をむけている伊那丸の顔を見ると、どうも、いいにくそうにして、貴公がいいたまえ、イヤおまえがいえ、とたがいになすり合っているばかり。

そんなことに、ふと目をはなしていたが、試合場のさわぎはいよいよ紛乱して、母衣馬や目付がものものしくかけまわり、なにか、番組急変の太鼓らしい合図が、ふいに、ドーンと鳴ったので、忍剣も小文治も、ハッと、口をつぐんでそのほうへ目をやった。

――と見ると、笹の才蔵は、うしろ姿をこっちに向けて、勝ちすてに豊臣家の幕かげへ引ッこもうとしている。