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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
――と見物の者は、はじめからこの早駆け勝負の結果を見くびっていたが、はたして、その予想ははずれなかった。
試合場の城戸から、八町参道とよぶ広い平坦な坂をかけおりてゆくうちに、燕作の小粒なからだはみるみるうちに追い越されて、とてもこれは、比較にはならないと思われるほど、そうほうの間にかくだんな距離ができてしまった。
だがしかし――燕作の肚にはりっぱに勝算がたっていた。
「見ていてくれ、ほんとの勝負はこれからさ」
と、たかをくくっているのだ。
そして八町参道をまたたくまにかけ降りると、道はふた手にさけて一方はふもと、一方は白鳥越え甲州裏街道の方角にあたる。
その裏街道のほうへさきの小文治が勢いよくまがった。
「ふふん……」と燕作は、それを見ながらあとからかけて、
「さあ、奴さんが泡を吹くのはこれからだぞ。そこで燕作さまは、このへんでじゅうぶん一息いれてゆくとしようか」
腰の手拭をとって風車にまわしながら、一汗ふいて、またもやあとからかけだした。
一方、いそぎにいそいでいった小文治は、やがて道のせばまるにつれて、樹木や蔓草に駒の足掻きをじゃまされて、しだいに立場がわるくなってきた。