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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
……はてざんねんなわけ、どうしてやろうか」
と、名馬草薙の足もそこよりは進みえずに、手綱をむなしくして、馬上にぼうぜんと考えこんでしまっていると、そこへ飛んできた早足の燕作が、
「ああ、やっと追いついた」と、ふりかえって、
「おい大将、失礼だけれど、お先へごめんこうむりますぜ」
尻をたたくようなかっこうを見せて、ぴょんと、傾斜の崖ッぷちへかかった。
「あッ」
と、われにかえって歯がみをする小文治を、
「まあ、ごゆっくり」
と見かえして、そういうが早いか、燕作のからだは、岩に着物をきせてころがしたように、そこから沢の下の水辺まで一いきにザザザザザとかけおりてしまった。
二
もうまよっている場合ではない。
小文治は馬をすてた。
あたりの喬木へ手綱をくくりつけておいて、燕作のあとから、これも飛鳥のように沢へおりた。
降りてみると燕作はもう渓流の岩をとんで、ひらりと対岸へあがっている。小文治が河の向こうへ渡りついた時には、やはり同じ距離だけをさきへのばして、こんどはスタスタと登りにかかった。
「お、白鳥の山へかかってきたのだな」
かれは気が気ではなかった。
まだ一里も二里もさきがある勝負なら、なんとかそれだけの距離を取りかえすことができようが、たしかここから十二、三町のぼった中腹がれいの大鳥居だ。