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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

のだ。

「おやおや、そうは問屋でおろさねえときたね。じゃ、やっぱり尋常に、あの上のやつを抜いて引っかえそうか」

と、急に考えなおした燕作。

なんの気もなく、まえの大鳥居の根もとのほうへふたたび足を向けかえてゆくと、その足のつまさきが、なにやら妙なものに蹴つまずいたと思ったので、ヒョイと見ると、嵯峨天皇風の字体で「白鳥霊社」と彫ってある四角な古い欅板だった。

「あれッ?」

といったまま燕作は、それと鳥居の上とを見くらべてあいた口がふさがらない。

なぜかといえば――

その板はまさしく大鳥居の上にかけてあるべきはずの額なんである。だのに……と思ってよくよく宙と大地の品とを見くらべてみると、鳥居の上には神額の縁だけがのこっていて、なかの板だけがここへ落とされてあることがわかった。

ではなんで落ちたか――ということは燕作にはもう疑問とするにたらなかった。証拠は歴然、そこに落ちている神額の中板の「白鳥霊社」の霊という文字を見ごとに突きさしていた一本の矢! 見るまでもないが手にとってみると、はたしてさいぜんの試合に、山県蔦之助が日輪巻の弓から切ってはなした白鷹の塗矢にちがいはないのである。