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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
矢はぬいて自分の腰にはさみ、神額の板は、人の気づかぬような雑木帯の崖へ目がけて力まかせにほうりすてた。
「ウム、これでよし」
いこうとすると、何者か、
「待て! 燕作」
「あッ……」
かれはなにものも見なかったであろう。
ふりむいたとたんに、天地がグルリとまわったように感じた。そしてえりがみをはなされた時には、脾腹をうって、鳥居の下に気をうしなっていた。
三
わずかの間をおいて、そこへ、燕作に追いこされた小文治が息をきって登ってきた。
しかし、ふしぎなことには、たったいま何者かに投げられて、大鳥居の下で気をうしなった燕作のからだが、どこへ片づけられたのか、そこに見えなくなっていた。
そういう変事があったのは知らないが、小文治はふしんにおもった。あとから登ってくるみちみちにも、くだってくる燕作に出会うだろうと思っていたのに、ここへきても、その姿が見えない。
「ひきょうなやつ、さては、このうえにも自分をだしぬくためにどこか近いぬけ道をまわっていったな」
いわゆる、負けた者のくそ落ちつきではないけれど、小文治もこうなるうえは、この遠駆けの勝敗を天意にまかせるよりほかはないとかんねんをきめた。