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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「えらい者が手に入った。その小童は、どうやら武田家の御曹子らしい。五十や百の金で、人買いの手にわたす代物じゃねえから、めったな手荒をせず、島へあげて、かいほうしろ」
そういって、三人の腹心の手下をよび、なにかしめしあわせたうえ、その脇差を、そッともとのとおり、伊那丸の腰へもどしておいた。
まもなく、軽舸の用意ができると、病人どうような伊那丸を、それへうつして、まえの三人もともに乗りこみ、すぐ鼻先の小島へむかってこぎだした。
「やい! 親船がかえってくるまで、大せつな玉を、よく見はっていなくっちゃいけねえぞ」
龍巻は二、三ど、両手で口をかこって、遠声をおくった。そしてこんどは、足もとから鳥が立つように、あたりの手下をせきたてた。
「それッ、帆綱をひけ! 大金もうけだ」
「お頭領、また船をだして、こんどはどこです」
「泉州の堺だ。なんでもかまわねえから、張れるッたけ帆をはって、ぶっとおしにいそいでいけ」
キリキリ、キリキリ、帆車はせわしく鳴りだした。船中の手下どもは、飛魚のごとく敏捷に活躍しだす。舳に腰かけている龍巻は、その悪魔的な跳躍をみて、ニタリと、笑みをもらしていた。