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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「そっちに、やましいところがないならば、なぜ明日まで待てぬというか」

と、雑魚のようにむらがってきて、龍太郎や蔦之助たちの歩行をじゃまするやからもある。

これが「血をみるなかれ」――刃傷禁断の御岳の神前でなければ、こんな雑魚どもに、かってな熱をふかせておくのではないが――と四人もジリジリ思ったろうし、はらはらして、そばにいた竹童も、歯ぎしりをかんで、ながめていた。

蛾次郎も、卜斎のうしろから首をだしていた。

そして、一人前に徳川家の肩を持って、

「なんだ、そんなばかな法があるもンか。やれやれ、やッつけろ」

ケシかけるような弥次をとばしたので、卜斎に、ぴしゃりとお出額をたたかれて、だまってしまった。

なにしろ、はてしがつかないさわぎだ。

刀のぬけない場所だけに、いたずらに声ばかり高く、理非もめちゃくちゃにののしる声が、一火と龍太郎以下の者を取りまいて、身うごきもさせない。

すわ、なにかことこそはじまったぞ! とそれへ加えて、上杉家、北条家、前田家、伊達家、そのほかの溜り場からも数知れない剣士たちがかけあつまってくる。

むろん、鐘巻一火の門人たちも、ただは見ていなかった。