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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「その浪島ともうす郷士が、あるおりに呂宋より海南にわたり、なおバタビヤ、ジャガタラなどの国々の珍品もたくさん持ちかえりましたので、殿のお目にいれ、お買いあげを得たいともうすので」

「それは珍しいものが数あろう」

梅雪入道は、このごろしきりに、堺でそのような品をあつめていたところ、思わず心をうごかしたらしい。

「とにかく、通してみろ。ただし、ひとりであるぞ」

「はい」家臣は、さがっていく。

入れちがって、そこへあんないされてきたのは、衣服、大小や、かっぷくもりっぱな侍、ただ色はあくまで黒い。目はおだやかとはいえない光である。

「取りつぎのあった、浪島とはそちか」

「ヘッ、お目通りをたまわりまして、ありがとうぞんじます」

「さっそく、バタビヤ、ジャガタラの珍品などを、余に見せてもらいたいものであるな」

「じつは、他家へ吹聴したくない、秘密な品もござりますゆえ、願わくばお人払いをねがいまする」

という望みまでいれて、あとはふたりの座敷となると梅雪はさらにまたせきだした。

「して、その秘密な品とは、いかなるものじゃ」

「殿――」

浪島という、郷士のまなこが、そのときいような光をおびて、声の調子まで、ガラリと変った。