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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「だって親方、やる仕事がないんだもの」

「あるさ、おれはおまえを見こんで、その大功をあらわす仕事をひきうけてきたんだ。おまえというものを、石見守さまにみとめさせようと思ってな。どうだ、どうだ蛾次、奮発して一つやってみるか。だけれど、イヤならむりとはいわないよ、ほかに、望み手はたくさんあるし、それに、この鉄砲で、ドンと一発やればそれでいい仕事なんだから……」

なにをいいふくめられたか、蛾次郎は、卜斎から、銀鋲のスペイン短銃と一両ほどの金子をもらって、すっかり仕事をのみこんでしまった。

「いいか、いまもいったとおり、石見守さまのおいいつけなのだ。大久保家の侍衆では、もし、見つかった時にぐあいがわるい。で、おまえなら、なあに、どこの小僧がいたずらをしたかですむ。それに、二十一日のあいだにやりさえすればいいんだから、立派に一つうち止めてこい。もし、なまけぐせをだしおって、やり損じなどした時には、それこそ、この卜斎より石見守さまがその細首をつけてはおくまいぞ」

すこしあとの文句がすごいな――と蛾次郎は思ったが、卜斎はそういいのこすと、かれをおきのこしてそこをかけだし、石見守の行列へついていった。