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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
という腑に落ちないことばである。
民部も龍太郎も、一党の人々は、見しらぬ旅の侍に油断はならないとたぶんな懐疑をもった。
伊那丸はかんがえて、
「したが、かりそめにも、菊亭右大臣家はわしの伯母さまのご縁づきなされた家がら、おうたがい申してはすまぬことだ。わしひとりで神殿においてその者に会いましょう」
と、ふたたび右近を介して、その旨をいいやった。
冷気のこもったうすぐらい拝殿に、二つの円座が設けられた。伊那丸と園部一学がそこに対座したとき、杉戸のそとには、木隠龍太郎や蔦之助や小文治などが、大刀をつかんで、よそながら主君の身を守っている気ぶりであった。
が――伊那丸は、京都からきたという一学をみると、すぐに、かれがあやしげな者でないことを信じた。
「若君はもうお忘れでございましょうが、去年、お父上の勝頼さまに似た僧侶をおしたいなされて菊亭家へお越しあそばしたことを」
「オオ」
「そのおり、よそながら一学は、おすがたを拝しておりましたが、わずか一年のうちに、見ちがえるばかりなご成長……」
そういって畏るおそる伊那丸を見上げながら、
「右大臣家において、常に、おうわさ申しあげております」