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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「どうした燕作」と声をかける。
「オオ、痛え! 才蔵さま、どうやらここは行止まりのようです」
「どんづまりにはちと早い、あわてずによくさぐってみい……おおこりゃ石段ではないか」
「え、石段?」
「人穴城は、裾野より高地となるから、この間道が、しぜんのぼりになるのは、はや近づいた証拠といえる」
才蔵がのぼっていく尾について、燕作も石段の数をふんでいく……と道はふたたび平地の坂となり、それをあくまで進みきると、こんどこそほんとうのゆきづまり、手探りにも知れる鉄の扉が、ゆく手の先をふさいでいた。
「燕作燕作、殿堂の間道門は、すなわちこれであろう。なんとかして、なかの者にあいずをするくふうはないか」
「とにかく、どなってみましょう」
と燕作は鉄門の前に立って、器量いっぱいな大声。
「やアやア搦手がたの兄弟、丹羽昌仙さまの密書をもって、安土城へ使いした早足の燕作が、ただいま立ちかえったのだ。開門! 開門」
鉄壁をたたいて呼ばわッたとたん、頭の上からパッとさしてきた龕燈のひかり、と見れば、高いのぞき窓から首を集めて、がやがや見おろしている七、八人の手下どもの顔がある。
「おお、いかにも、燕作にちがいないらしいが、あとのひとりは人穴城で見たこともないやつ、軍師さまの厳命ゆえ、さような者は、ここ一寸も、とおすことまかりならん。