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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

人の蛇形陣が、嵐のごとくまっしぐらに、こなたへさしてくるのが見えだした。

八風斎は、ぎょっとして、さけんだ。

「蛾次郎、蛾次郎、すがたをかくせ、早くかくれろ」

「え、え、え、なんです。親方親方」

「バカ! ぐず――見つかっては一大事だ、はやくそこらへ姿をけせ」

「ど、どこへ消えるんで? ……」

と、不意のできごとに、蛾次郎は、度をうしない、まだうろうろしているので、八風斎は、「えいめんどう」とばかり、かれをものかげに突きとばし、じぶんはすばやく、かたわらの松の木へ、するするとよじ登ってしまった。

ふたりが、からくも、すがたを隠したかかくさないうちである、八風斎の目のしたへ、潮の流れるごとき勢いで、さしかかってきた蛇形の行軍、その人数はまさに四百余人。みな、一ようの陣笠小具足、手槍抜刀をひっさげて、すでに戦塵を浴びてるようなものものしさ。

なかに、目立つはひとりの将、漆黒の馬にまたがって身には鎧をまとわず、頭に兜をかぶらず、白の小袖に、白鞘の一刀を帯びたまま、鞭を裾野にさして、いそぎにいそぐ。

「あ、あの人は見たことがあるぜ」

ものかげにいた蛾次郎は、目をみはって、その馬上を見おくったが、ふと気がついて、