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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「やあ、おめえは、クロじゃねえか」

一どはびっくりしたが、そこにいた怪物は、おなじみの竹童のクロだったので、蛾次郎は思わず、人間にむかっていうようなあいさつをしてしまった。

そして、いまの泣きッ面を、グニャグニャと笑いくずして、

「しめ、しめ! 竹童がいないまに、この鷲をかっぱらッてしまえ。鷲にのって菊池半助さまのところへいけばお金はくれる、侍にはなれる、ときどきクロにのって諸国の見物はしたいほうだい。アアありがてえ、こんな冥利を取りにがしちゃあ、天道さまから、苦情がくら」

竹の小枝を折って棒切れとなし、竹童うつしにクロの背なかへのった泣き虫の蛾次郎。ここ一番の勇気をふるいおこして、鷲ぬすみのはなれわざ、小屋の前からさッと一陣の風をくらって、宙天へ乗り逃げしてしまった。

二

血相かえて、小山の素天ッぺんへ駈けあがってきた早足の燕作、きッと、あたりを見まわすと、はたして、そこの粘土の地中に狼煙の筒がいけてあった。

スポンとひき抜いて、その筒銘をあらためていると、すきをねらってものかげから、バラバラと逃げだしたひとりの少年。

「うぬ、間諜!」

ぱッと飛びついて組みかぶさった燕作、肩ごしに対手の頤へ手をひっかけて、タタタタタと五、六間ひきずりもどしたが、きッと目をむいて、