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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

まだこの独楽にはふしぎな力がたくさんあって、たとえば、じぶんの迷うことを問わんとし、または指すべき方角をこころみる時に、この独楽をまわせば自然にそのほうへまわってゆく――、などということもあるが、あまり話すと、また蛾次郎が勘ちがいをいたすから、もうそのほうのことはいうまい」

「おじさん、――じゃアなかった。神主さま、もう蛾次郎も、けっして勘ちがいなんかしないことにいたします」

「わかったわかった、ところで竹童」

「はい」

「この紅い火独楽はそなたに進上する」

「えッ!」

といったのは、もらった竹童ではなくって、それをながめた蛾次郎である。

「そ、それを竹童に? ……もったいないなあ。じゃおれにもこっちをくれるんだろう」

「やらないとはいわない。この青い水独楽は、すなわちおまえにあげようと思って、とうから考えていたくらいなのだ」

「ちぇッ、かたじけねえ」

独楽を押しいただいた蛾次郎は、そのままうしろへ引っくりかえって、鯱鉾だちでもやりたかったが、また叱られて取りあげられては大へんと、かたくにぎって踊りだしたいのをこらえていた。

「そこでな、ふたりの者」

きッとあらたまった宮内は、まず少年の心理をつかんでおいてから、その本道を説こうとする。