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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

欲しいものは与えられ、愉快な方法はおしえられて、なんで少年の心がおどり立たずにいよう。竹童はむろんそれに異存もなし、蛾次郎も一言の不平なく、きっとその約束を守りますといって宮内にちかった。

でふたりは、いいつけられた仮面をかぶり、あたえられた独楽をかたく抱いて、奥の部屋に、今夜だけは仲よく寝こんでしまった。

割れたお仮面

一

死人の顔のように青い月があった。

にらんでいるかと思うほど冴えている。月も或る夜はおそろしいものだ。

昼は蓬莱山の絵ともみえた竹生島が、いまは湖水から半身だしている巨魔のごとく、松ふく風は、その息かと思われてものすごい。

まさに夜半をすぎている。

ザブーン! と西浦の岩になにか当った。パッと散ったのは波光である。百千の夜光珠とみえた飛沫である。だが、そこに、怪魚のごとき影がおどっていた。舟だ、人だ。

「やッ」

とさけんだのは舟中の男だろう。ほかに人はだれもいない。またつづいて、やッ! という声がかかった、声というよりは気合いである。

ピューッと舟から空に走ったのは、鈎のついた一本のなわ。ガリッというと手にもどって、上からザラザラと岩のかけらが落ちてくる。