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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
だから、その奇蹟についてはあまり、多くを語らなかったが、火独楽水独楽、どっちも、なにかの不可思議力を持つものにちがいない。
だが、――竹童の今は、しんに、間一髪をおく間もない危機である。もとより、かれが、卜斎が大刀をふりかぶったとたんに、ふところの独楽をつかんだとはいえ、ふかい、冷静な、思慮ののちにそうしたのではない。寸鉄もおびていない自衛意志が、おのずから独楽をつかませたのだ。
それが、たとえば一個の石にすぎなくとも、この場合、竹童の手は、その石へふれていたにちがいない。
「なんできさまたちの刃にたおれるものか!」
口にはださないが、竹童の顔筋肉はそういう風に引きしまっていた。
そして、独楽をかたくにぎった。
遊戯に、まわすべき独楽なら、紐のこともかんがえるが、いまの場合そうでない。武器として、目つぶしとして、敵が大刀へ風を切らせてくるとたんに、卜斎の眼玉へ、それをたたきつけようと気がまえているのだ。
卜斎も、竹童のたいどをみて、うかつにはそれをふりおろしてこない。ジリ、ジリ、と一寸にじりに寄りながら息をはかり、気合いをかけたが最後、ただ一刀に、息の根をとめてしまおうとするらしい。