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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
と、走りながら、周囲の者へせわしく話した。
扇縄の水の手へ、首となって落ちてきた黒川八十松は、城攻めの最中に、樺の林につないであった竹童の鷲の鎖を切ったのだ。そしてかえって、鷲のために食いさかれて、非業な死をとげたのだ!
「あぶないぞ、あぶないぞ! あの鷲は敵と味方をちゃんと見分けている。だから、八十松の首をくわえていたんだ。そして、竹童をすくいに降りてきたんだ」
「気をつけろよ、うっかりしてあのすごい爪につかまれるな」
注意をしながら駈けてきた。
しかし――鷲の雄姿は、もう貯水池のまわりには見えなかった。
「おッ、井楼櫓の屋根にやすんでいる」
とだれか見つけて、またいっせいにそのほうへ駈け向かっていく。
「わアーッ」
と諸声を合わせたので、翼を休めていたクロは、さらに羽をうって舞いあがった。けれど、さすがな大鷲も、二、三歳の嬰児なら知らぬこと、竹童ほどな少年のからだをくわえてそう飛べるはずはない。
水面からそこへうつったのが極度の力であったろう。櫓の上を離れると、さすがに強い猛鷲も、むしろくわえている重量に引かれこんでゆく形。
みるまに、下へ――下へ――下へ――。