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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

かれの歩むにつれ彼の手から、紙でつくった桃色の蓮華の花片がひらひら往来へ散らばった。

その蓮華のあとを慕って、

「おじさん、紙おくれよ」

「おじさんおくれよ」

「紙をよ、紙をよ」

「紙をおくれよ、おじさん」

と、こまッかい町の子供が、二十日ねずみのようについてあるく。

どこの国からきた、どこのお寺の行人であろうか、天蓋に瓔珞のたれたお厨子を背なかにせおい、胸には台をつって鉦と撞木をのせてある。そして行乞でえた銭は、みなその鉦のなかにしずんでいた。

うしろへまわって、お厨子をのぞくと、金泥のとびらが開けてあって、なかには一基の地蔵菩薩の像がすえてある。そのまえには、秋の草花、紅白のお餅、弄具やよだれ掛やさまざまなお供物が、いっぱいになるほどあがっている。

「ああ、そんなにまえへまわると、おじさんが歩けなくなるじゃないか」

こういって地蔵行者は、小さい手に取りまかれながら、背なかあわせに負っている地蔵菩薩とそっくりのような人のよい笑顔をつくった。

「よウ、よウ、よウ、おじさんてば」

「紙おくれよ、さっきの紙をさ」

行者はニコニコ見まわして、

「いまあげるよ、あげるから、けんかをしちゃいけない、おとなしくして……」