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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
やわらかいぞやわらかいぞ、お大名の寝床だって、こんなに上等じゃああるまいなあ、などと牧をとかれた山羊みたいに、ワザとごろごろころがってみた。
「独楽もある」
ふところからだして、頬ッぺたにおしつけた。
木隠龍太郎からヤッとかえしてもらった独楽である。いつか蛾次郎にもこの独楽が、命から二番目の大事なものになっている。かれがこの水独楽を愛すること、竹童がかの火独楽をつねに大事にするのと愛念において少しもかわりはないのであった。
「独楽よ、独楽よ」
独楽の心棒は蛾次郎が頬ずりするあぶらをうけて、暗やみのなかでもまわりそうになった。なんだかこの独楽には霊があっていきてるもののように思われる。いったい、独楽というものは、手でまわるのかしら? 心が打ちこまれてまわるのかしら?
疑問はでたが、そうヒョッと、考えただけで、これは蛾次郎の智能では解けそうにもない。
いちじ、濠端でひっくり返ったかれが、この独楽をかえしてもらって無事に長屋へもどってきたところを見ると、あれから龍太郎の詰問にあって、小太郎山いらいのこと、躑躅ヶ崎の内情など、すっかり話してしまったことは、もううたがうまでもない。