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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

幅はせまいが、嵐弦の滝とよぶ百尺ほどの水がドウッと落下している。もし、二十一日の間に、風雨にあって、山毛欅の枝がおれたらどうだろう。かれのからだをささえている縄がすり切れたらどうなるだろう。

そうだ、すべてのことが、忍剣の生命を、髪の毛一すじで持たしてあるのだ。それが神刑なのだ。

まんがいち、二十一日目に神官がきてみて、細い息でもかよっていれば、神に謝罪がかなったものとして、罪をゆるされて手当をする、しかしここ四、五十年のあいだに、ご神木の山毛欅に梟けられたもので、助かった者はないということだ。

――すると、三日、四日、五日とすぎて、ちょうど八日目のこと。

千年山毛欅の枝から枝を、ひらり、ひらり、ひらり、とよじのぼっていったものがある。

見るまに、十数丈のたかい樹上にのぼった。そして、忍剣のそばの枝に取ッついた。

おかしいことには、なにか、忍剣の耳へはなしかけているふうに見える。だが、それは一匹の猿なのである。猿が話しかけるのはすこしへんだ。忍剣には、あの三太郎猿にも知己がないはずであった。

八

目隠しをされているので、忍剣はそばへきた者を見ることができない。