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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「咲耶子もそうだが、竹童が欠けているのではないか」
「オ。その竹童は、また鷲をさがすといって、どこかへひとりで立ち去った」
「いや、うそだ」
と、忍剣はやや興奮的に首をふって、
「おれはきょうまで、こうして、少しも疲れずにいたのは、まったく、かれが苦心惨憺して、朝ごとに食を口にいれてくれたおかげだ。どこかそこらにいるにちがいないからさがしてくれ」
と、大声でいった。
御岳の神官たちはおどろいた。
けれど、伊那丸や党の人々たちは、その話をきいて、なんだか涙ぐましくさえなった。しかし、いくらあたりをたずねても、かれのすがたが見えないので、落胆しているところへ、崖の細道をかきわけて、菊村宮内が、水から助けあげたふたりの少年をつれてあがってきた。
「おっ、いた!」
期せずして、かれの周囲を、一同のものがドッと取りまいた、ただそのようすを、さびしそうにながめていたのは、坂東巡礼のお時であった。
二
あの楢の枝から落ちて、ふしぎにふたりはかすり傷もなかった。その奇蹟を、地蔵行者の菊村宮内は、竹生島神伝の独楽、火独楽と水独楽をめいめいがふところに持っていた功力であるといって、その由来をつぶさに話した。