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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
五
小太刀の精のかぎりをつくして、斬りまわった。
しかし何せよ、慓悍無比な命しらずである。ただでさえ精のおとろえている伊那丸は、無念や、ジリジリ追われ勝ちになってきた。
五
その時であった。
空と波との水平線から、こなたの島をめがけて、征矢のように翔けてきた一羽のくろい大鷲。
ぱッと、波をうっては水けむりをあげた。空に舞っては雲にかくれた。――やがて、そのすばらしい雄姿を目のあたりに見せてきたと思うと、伊那丸と五人の男の乱闘のなかを、さっと二、三ど、地をかすって翔けりまわった。
「わーッ、いけねえ!」
のこらずの者が、その巨大な翼にあおりたおされた。むろん、伊那丸も、四、五間ほど、飛ばされてしまった。
嵐か、旋風か、伊那丸は、なんということをも意識しなかった。ただ五人の敵! それに一念であるため、立つよりはやく、そばにたおれていたひとりを、斬りふせた。
くろい大鷲は、伊那丸の頭上をはなれず廻っている。砂礫をとばされ、その翼にあたって、のこる四人も散々になって、気を失った。――ふと、伊那丸は、その時はじめて、ふしぎな命びろいをしたことに気づいた。空をあおぐと、オオ! それこそ、恵林寺にいたころ、つねに餌をやって愛していたクロではないか。