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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

それがなんといたしたのだ」

「ここに一つの手柄をきっと立てますゆえ、お館の家来の端になりと、お加えなされてくださりませ」

「ふウ――どういう手柄を立てて見せるな」

「この三箱の黄金をかれにわたさずして、まんまと、武田伊那丸を龍巻の手よりうばい取ってごらんに入れますが」

「ぬからぬことをもうすやつだ。して、その策は?」

「わが君、お耳を……」

小幡民部の民蔵が、なにをささやいたものか、梅雪はたちまち慾ぶかいその相好をくずして、かれのねがいを聞きとどけた。そして、えらびだした武士二、三人に、密命をふくませ、そこからいずこともなく放してやると自身はふたたび、民蔵を行列の先頭にして、闇夜の街道を、しずしずと進んでいった。

三

まもなく着いた、阿古屋の松原。

梅雪入道は鞍からおりて、海神の社に床几をひかえた。

と――やがて約束の亥の刻ごろ、浜辺のほうから、百鬼夜行、八幡船の黒々とした一列が、松明ももたずに、シトシトと足音そろえて、ここへさしてくる。

「民蔵、民蔵」

と鳥居まえで、合図をしたのは龍巻にちがいなかった。民蔵は梅雪のそばをすりぬけて、そこへかけていった。

「お頭ですか」