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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

天翔る鞍馬の使者

一

手に手に太刀をふりかざして、あわてふためく穴山一党のなかへ、天魔軍のごとく猛然と斬りこんだ。

ニッコと笑って、丘に立った咲耶子が、さッと一閃、笛をあげればかかり、二閃、さッと横にふればしりぞき、三閃すればたちまち姿をかくす――神変ふしぎな胡蝶の陣。

天翔る鞍馬の使者

一

きょうも棒切れを手にもって、友だち小猿を二、三十匹つれ、僧正谷から、百足虫腹の嶮岨をつたい、鞍馬の大深林をあそびまわっているのは、果心居士の童弟子、いが栗あたまの竹童であった。

「おや、こんなところへだれかやってくるぞ……このごろ人間がよくのぼってくるなア」

竹童がつぶやいた向こうを見ると、なるほど、菅笠に脚絆がけの男が、深林の道にまよってウロウロしている。

「オーイ、オーイ――」

とかれが口に手をあてて呼ぶと、菅笠の男が、スタスタこっちへかけてきたが、見ればまだ十歳ぐらいの男の子が、たッたひとり、多くの猿にとり巻かれているのでへんな顔をした。

「おじさん、どこへいくんだい、こんなところにマゴマゴしていると、うわばみに食べられちまうぜ」

「おまえこそいったい何者だい、鞍馬寺の小坊主さんでもなし、まさか山男の伜でもあるまい」