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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
それを取ってさらに射る。その迅さ、あざやかさ、目にもとまらぬくらい。
しかしその矢は、二どめからみな宙にあがって二つにおれ、ハラリ、ハラリと地上に返ってくる。てっきり鷲の上には何者かがいる! 蔦之助ももとより射おとすつもりではない。そのふしぎな人物をなんとかして地上へおろしてみたら、あるいは、日吉の塔の上にいた、奇怪な人間のなぞもとけようかと考えたのであった。
矢数はひょうひょうと虹のごとく放たれたが、時間はほんの瞬間、すでに大鷲は町の空を斜めによぎって、その雄姿を琵琶湖のほうへかけらせたが、なにか白い物をとちゅうからヒラヒラと落としさった。それを見て、
「よしッ」
ガラリと弓を投げすてた蔦之助は、紙片の落ちたところを目ざして、息もつかさずにかけだした。
飛ぶがごとく町はずれをでたかれは、一念がとどいて、ある原へ舞いおちたものをひろった。
手にとって開いてみれば、芭蕉紙ぐるみの一通の書面。
加賀見忍剣どのへ知らせん この状を手にされし日 ただちに錫杖を富士の西裾野へむけよ たずねたもう御方あらん 同志の人々にも会い給わん
かしん居士
四
竹童は弱った。しんそこからこまった。