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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

てまいりました」

「待てまて、たずねることがあらば、なんでも答えるほどに、その層雲くずれの凶兆を封じる秘法をおしえてくれ」

「ですから、まずわたくしのほうのたずねることからお答えくださいまし」

「よし、なんでも問うてみるがいい」

「ではおききもうします」

と、竹童はやおらひと膝のりだし、

「湖水のそこに沈めてありました石櫃をあげて、なかにあった御旗楯無の宝物をすりかえたのはたしかにあなた――これはお師匠さまも遠知の術でわかっております。されどその宝物を、あなたはだれにわたしましたか、または、この山寨のうちにあるのですか。ききたいのはつまりそのこと一つです」

呂宋兵衛は、心中すくなからずおどろいた。果心居士といえば、京で有名な奇道士だが、まさか、これまでに自分のしたことを知っていようとは思わなかった。それほどの道士なれば、竹童のことばもほんとうにそういないだろうし、ひそかに湖水からすりかえてうばった宝物は、いまでは手もとにないのだから打ち明けたところで、こっちに損得はない――と思った。

「そんなことならたやすいこと、いかにもあきらかに答えてやろう。だが……」

と呂宋兵衛が武士だまりの者へ、チラとめくばせをすると、バラバラと立ちあがったふたりの荒くれ武士が、いきなりムンズと竹童の左右から両腕をねじ押さえた。