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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「斥候に?」

蛾次郎ぎょっと、目を白くした。

竹童は、ことさらに、なんでもないような顔をして、

「このあいだから、雨ヶ岳に陣取っている、武田伊那丸さまの軍勢が、人穴城へむかってうごきだしたら、すぐここまで知らしてくれりゃいいのだ」

「そしたら、いったい、どうする気なんだい?」

「どうもしないさ、この鷲にのって、大空から戦見物にでかけるのさ」

「おもしろいなあ、おれもいっしょに乗せてくれるか」

「やるとも」

「よしきた、いってくら!」

よく人のだしにつかわれる生まれつきだ。年下の者のおちょうしにのって、もう、一もくさんにかけていく。

そのあとで竹童は、鷲の足をといてやった。クロは自由の身になっても、竹童のそばを離れることなく、流れる水をすっていると、かれはまた火打石を取りだして、そこらの枯葉に火をうつし、煙の立ちのぼる夕空をあおぎながら、

「おそいなあ。あのぐずの斥候を待っているより、またじぶんでそこいらの木へ登ってみようかしら」

と、ひとりつぶやいたとこである。

すると、いつの間にか、かれの身辺をねらって、じりじりとはいよってきたふたりの武士――それはまえの甲虫だ、いきなり飛びついて、