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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「死ねやいまこそ、死ねやわが友」

「おお、死のうぞ方々」

たがいに、いただく死の冠。

えいや、えいや、かけつづく面々には、忍剣、民部、蔦之助、そして、女ながらも、咲耶子までが、筋金入りの鉢巻に、鎖襦袢を肌にきて、手ごろの薙刀をこわきにかいこみ、父、根来小角のあだを、一太刀なりと恨もうものと、猛者のあいだに入りまじっていく姿は、勇ましくもあり、また、涙ぐましい。

ただ、こよいのいくさに、一点のうらみは、ここに、かんじんかなめな、木隠龍太郎のすがたを見ないことである。

上は大将伊那丸から、下は雑兵にいたるまで、死の冠をいただいてのこの戦いに、大事なかれのいあわせないのは、かえすがえすも遺憾である。ああ龍太郎、かれはついに、伊那丸の前途に見きりをつけ、主をすて、友をすて去ったであろうか。――とすれば、龍太郎もまた、武士の風上におけない人物といわねばならぬ。

二

「いよいよ攻めてまいりましたぞ」

「なに、大したことはない。主従合しても、せいぜい八十人か九十人の小勢です」

「小勢ながら、正陣の法をとって、大手へかかってきたようすは、いよいよ決死の意気、うっかりすると、手を焼きますぞ」