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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
竹童は観念してしまった。
ままよ、どうにでもなれ、お師匠さまからいいつけられた使命は、もう十のものなら九つまでしとげたのもどうよう、呂宋兵衛の手下につかまって、首をはねられても残りおしいことはないと思った。
「じゃ、どうしろっていうんだい」
おのずから、声もことばも、大胆になる。
「その手をはなしてしまえ」
「手をはなせば、ここから下まで、まッさかさまだ」
「いや、おれがこう持ってやる」
下の者は背をのばして、竹童の腰帯をグイとつかんだ。もうどうしたってのがれッこはない、竹童は、運を天にまかせて、棟木の角へかけていた手を、ヒョイとはなした。
「えいッ」
はッと思うと、竹童のからだは、望楼台の上へ鞠のように投げつけられていた。覚悟はしていても、こうなると最後までにげたいのが人情、かれは、むちゅうになってはね起きたが、すかさず、いまの男が、上からグンと乗しかかって、
「まだもがくか!」
と手足の急所をしめて、磐石の重みをくわえた。それをだれかと見れば、さっき、呂宋兵衛や昌仙とともに、ここにいた可児才蔵である。
安土から選ばれてきた可児才蔵とわかってみれば、なるほど、竹童が、つかまれた足を離せなかったのもむりではない。