轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

おりから伊勢路一円は、いよいよ秀吉が三万の強軍を狩りもよおして、桑名の滝川一益を攻めたてていたので、多羅安楽の山からむこうは濛々たる戦塵がまきあがっていた。

三

伊勢は戦といううわさだが、京都の空はのどかなものだ。公卿屋敷の築地には、白梅の香がたかく、加茂川の堤には、若草がもえている。

そのやわらかい草のうえに、グタリと足をのばしている少年。ときどき、水をみてはさびしい顔――空をあおいではポロポロと、涙をこぼしている。

「クロ! クロ! こんなにおまえをさがしているおいらをすててどこへかくれてしまったんだい、クロ、もう一どおまえのすがたを見せておくれ。おいらはおまえがいないので、こんなにさびしがっているんだぜ! さがしてさがしぬいて、こんなにつかれているんだぜ!」

鞍馬の竹童は空へむかってこう叫んだ。

しかし、その訴えに答えてくれるものもなければ、クロの幻影さえも見えてこない。かれはまたぼんやりと加茂の流れをみつめていた。

すると、往来からこっちへ歩みよってきた男が、

「おい、おまえは竹童じゃねえか」

ふいに背なかをたたいていった。

「え?」

と、すこしおどろいた顔をして、その男をふりあおいだ竹童は、へんじをするまえにパッと立ちあがって、般若丸の柄へ手をかけた。