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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「おいおい、やぼなことをするなよ」

と、男は手をかまえて、飛びのきながら、

「人の面をみると、すぐ喧嘩面だから怖ッかなくってしようがねえなあ。竹童、おめえとおれとは、なにも仇同志じゃあるめえし、そういつまで根を持つことはねえじゃねえか」

としきりとなだめている男は、裾野落ちのひとりである早足の燕作。なぜか、きょうにかぎってばかに下手だ。

「なあ竹童――じゃあない、竹童さん。そういつまでも怒ってるのはやぼだぜ。呂宋兵衛は没落するし、人穴城の住人でもなくなってみれば、おまえとおれはなんの仇でもありゃしねえ。久しぶりで仲よく話でもしようじゃねえか」

竹童は純なものだ。そういわれてまで、かれを敵視する気にもなれないので、意気ごんだ力抜けに、またもとの堤草へ腰をおろした。

「みょうなところで会ったなア」

と燕作もそばへ寄ってきて、

「どうしておまえひとりで、こんなところにぼんやりしているのよ。え? ばかに元気のねえ顔つきじゃねえか」

「クロがいなくなったので、それでがっかりしているんだよ」

「クロ? ……なんだい、クロってえのは」

「おいらのかわいがっていた大鷲」

「ああなるほど――」