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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

四

竹童はすばやく跳ねかえって、チャリン! とそれを引ッぱずした。が、それは剣の法ではなく、いつも使いなれている棒の呼吸だ。

鞍馬のおくを下りてから、きょうまでいくたびも生死のさかいを超えてきたが、ほんものの刀をとって、敵と刃交ぜするのは竹童きょうがはじめての経験である。なんともいえぬおそろしさだが、またなんともいえぬ壮快な気分と、必死の力が五肢にも刃にもみなぎってくる――

四

「この山猿め、味なまねをしやがるな」

燕作は見くびりぬいて上段にかまえ、すきをねらって竹童の手もとへ、パッと斬りつける。

鞍馬の竹童、剣道は知らぬが、胆は斗のごとしだ。

「なにをッ」

と叫ぶがはやいか、名刀般若丸を棒とおなじに心得て燕作の刀へわが刀をガチャッとたたきつけていった。

なんでたまろう、二条の白虹、パッと火花をちらしたかと思うと、燕作の鈍刀がパキンと折れて、氷のごとき鋩子の破片、クルッ――と虚空へまいあがった。

「しまった!」

と燕作、悲鳴をあげて逃げだすところを、やっと追いすがった竹童が、ただ一息に、斬りさげようとすると、サヤサヤと葉をそよがせた楊柳のこずえから、雨でもない、露でもない、ただの光でもない、音のない銀の風!