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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「そんな意地の悪いことをいうなよ。じつは裾野を落ちていらい、着のみ着のままで、路銀もなし資本もなし、なにをすることもできずに困っているところだ。後生だから、その刀を貸してくんねえ。二、三百両にゃ売れるだろうから、そうしたらおまえにも、小判の十枚や二十枚は分けてやるぜ」

「ばかなことをいうとしょうちしないぞ」

「オヤ、こんちくしょう」

と燕作はグッと腕をまくりあげて立ちあがって、竹童の胸ぐらをつかんだ。

「さっきから下手にでていればツケあがって、素直にわたさねえとまた痛い目に会わすからそう思え」

「おのれ、さてはやさしくいいよって、はじめからこの刀をとろうとしていたんだな」

「知れたことよ。だれが、てめえみてえな山猿に、ただペコペコするやつがあるものか!」

「ちぇッ、そう聞けばなおのこと、命にかけても般若丸をわたすものか!」

「命知らずめ、後悔するなよッ」

もろ手で咽をしめつけながら、足がらみをかけて、ドンとねじたおすと、たおれたとたんに竹童が、さっと下から般若丸の冷光をよこざまにはらった。

「おッとあぶねえ!」

一足とびに切ッ先をかわして、おのれも脇差をぬきはらった燕作、陽にかがやく大刀をふりかざして、ふたたびタタッ――と斬りこんでくる。