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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「おお、ありゃクロだ! 竹童がたずねている大鷲だ」
禅杖をあげて忍剣が高くさけぶと、龍太郎と伊那丸も目をみはって、
「うむ! まさしくクロにそういない。寒松院の並木へのろしの音はきこえてきたが、竹童はあのまま帰らぬ。もしや鷲に乗って、追いついてきたのではあるまいか」
「そういえばだれか乗っているようす、――や、竹童だ!」
「なに竹童が乗っている。オオ、竹童――竹童ッ――」
とふたりが、声をあげて大空に呼んだが、鷲はひくく樹木のさきへふれるばかりにおりてきて、また、ツーッとあらぬ方角へそれてしまう。と、龍太郎が、なにを見いだしたかおどろきの声をはずませて、
「や、ふしぎな! あの鷲には、竹童ばかりでなく、ほかの童子も乗っている。たしかにふたりの人間が乗っている」
「龍太郎どのの目にもそう見えたか、わしもそう思ってふしぎに感じていたのだ。アレアレ、こんどは湖水のほうへいっさんにかけりだした――」
瞳をこらして見ていれば、さっさつたる怪影は、関の山から竹生島のあたりへかけて、ゆうゆうと翼をのばして舞うのであった。その鷲の背にありとみえた両童子こそ、まぎれもあらず、南蛮寺の丘からムシャブリついて飛びあがった、鞍馬の竹童――泣き虫の蛾次郎。