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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

いかにもふしぎな魔独楽の力よ!

とあやしまれたがのちによく見れば、独楽の金輪の一端に、ほそい金環がついていて、その金環から数丈の紐が心棒にまいてあるのだ。はねもどったのは、独楽それ自身の魔力ではなく、竹童の帯に結んであった紐の弾撥。手もとへおどり返ってきたのは、とうぜんなのであった。

三

竹童をとり逃がして卜斎は、不意の燦光に目をいられて、一時は、あたりがボーッとなってしまったが、廊下を走ってゆく足音を聞きとめると同時に、

「うぬッ」

憤然として、その真ッ暗な部屋からかけだした。

そして、いきなり廊下から、庭先へ降りようとして、やみのなかにそれと見えた、沓脱石へ足をかけると、こはいかに、それは庭の踏石ではなくて、ふわりとしたものが、足の裏にやわらかくグラついたかと思うと、

「ぎゃッ」と、蛙のようにつぶれてしまった。

それは、竹童より先ににげた泣き虫の蛾次郎で、いま、床下へもぐりこもうとしているところへ、卜斎の足音がしてきたので、そのまま、縁の下へ首をつっこんだなりに、石の真似をしていたものらしい。

あの勢いで、大兵な、卜斎に踏みつけられたのだから、蛾次郎もギャッといって、ぴしゃんこにつぶれたのはもっともだが。