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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

あくまで伊那丸を中心とする一党が、その盟主をうしなって、なんの最後の一戦がはなばなしかろう。どうしても、いかなる手段をもって、石に噛みついても! 伊那丸をたすけなければ意義がない! 武士道がない。

はなやかならぬ、また勇にのみはやれぬ、軍師のつらい立場はそこにあるのだ。

「ああ策は一つしかない」やがて、かれは決然といった。

「蔦之助どの、小文治どの、すぐに、旅のおしたくを!」

「や、われわれのみで? その他の味方は?」

「むしろ秘密に――」

と、民部は席をたって、太刀をはき、身ごしらえにかかった。

熟考の長さにひきかえて、意を決するとすぐであった。蔦之助と小文治も、膝行袴の紐をしめ、脇差をさし、手馴れの弓と、朱柄の槍をそばへ取りよせた。

「民部さま……」

咲耶子と竹童は、じぶんたちに指図のないのを、やや不満に思って、おなじように身じたくをしようとしながら、

「わたしも」

「わたくしも」

一しょに立つと、民部はそれを制して、

「ふたりは、どうかとりでのるすを護っていてくれい。なお、われわれがおらぬ間も、われわれがいるように見せかけて、こよい、三人が小太郎山をぬけだしたことは、かならず、敵にも味方にも秘密にしておくように」