轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

毒水に酔う砦

一

「竹童さアーん、竹童さアん! ……」

やがてだれかのこう呼ぶ声がする。

咲耶子であった。

彼女はいま、砦の二の丸から、崖をよじてこの高原にのぼってきた。

「竹童さアーん!」

二つの掌を口にかざしながら、雲とも夕霧ともつかない白いものにボカされている果てへ、声かぎり呼び歩いてきた。返辞がない。

つねに目なれている景色ではあるが、そこのうるわしいながめにも足もとの花にも、なんの魅力を感ぜずに咲耶子は、ひたすら、すがたの見えない竹童をあんじていた。

きょうの午ごろまでは、じぶんと一しょに、砦のおくの櫓に、きのうと同じように油断なく小太郎山を見張っていたのに、いつのまにか櫓を下りていったきりかえってこない。

この四、五日のあいだは、小幡民部をはじめその他の人たちが、とおく三方ヶ原まで伊那丸の危急を救いにかけつけているだいじな留守! その留守のあいだは、味方の武士がこめている砦とはいえ、けっして油断をしてはならないのに、あの子はまアどこへいってしまったのだろう? ……

「ほんとに、竹童さんはまだ子供だ。もう日が暮れようとしているのに――わたしにこんな心配をさせて」