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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「おやすいことではございませんか」

「それがなかなか見つからぬのじゃ」

「地相、岩脈、山骨、樹姿、それらのものからよく観ると、どんな隠し道でもかならずわかるわけでございます。ことに、ここには野呂川があり、そこへ落ちる山瀬の水もありますことゆえ、水理を検討してゆきましても、それくらいなことは、さぐりあたらぬはずはございません」

「おまえ、たいそうくわしいな」

「は、は、は、は、は」

卜斎もわれながらおかしくなって笑いだした。

柴田権六に召使われていたころは、つねに、攻めようとする敵地へ先へはいって、そこの地勢水理をきわめておくのが自分の仕事であった。日本では何人と指を折られる築城の地学家、これくらいなことは、表看板の鏃をたたくことよりたやすいこと。

で、卜斎は瞬間にかんがえた。

世間はひろく歩いてみるものだ、――秀吉にはにらまれている身の上、家康の恩顧をうけるほかに生き道はないと考えていたら、これは、偶然とはいえ、願ってもないことにぶつかったものだ。

「どうですナ、お武家さま」と、さて、じぶんから口を切って、

「それほどおこまりのものならば、ひとつ、わたくしがこの砦のいただきへでられる道を、案内してあげようではございませんか」