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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「ふム、ふム」

と、一同の目は、お時と宮内にあつまった。

「――たッた一つある手がかりは、その児の背なかに、お諏訪さまの禁厭というてすえた、大きな虫の灸のあとがあることだけです」

「なるほど、背なかにお諏訪さまの灸のあとがあれば、なんとか、いまに見つかるでしょう、あの灸点は甲府の近郷でやっているほか、あまり他の国にはあんな大きな灸は見ないからの」

「まア、力をおとしなさんな」

「坂東三十三ヵ所の功力でも、いまにきっと見つかりますよ」

と、郷土の人たちのことばは温かく、わずかな金をさいて合力したり、握り飯をとって茶をついでくれたりして、なぐさめてくれているうちに、いつか話がそれて、だれも気がつかないすきまだった。

宮内にもだまって、巡礼のお時は、そこの軒下から走りだしていた。

そして、さきへひとごみを追いながら、せまい宿場の人ごみを縫ってゆく。

「あの子じゃないかしら?」

と、お時は、さきへゆくひとりの少年をつけてゆくのだった。

いつも、それではあとでがっかりするが、ちょうど思うころの年ごろの少年を見ると、お時は、どうしても、あとを追わずにはいられない。

「あの子かしら?」