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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

龍太郎しかり、小文治しかり、蔦之助も忍剣も、髀肉の嘆をもらしながら、四本の鎖でとめられた四疋の豹のような眼光をそろえて両肱を張っている。

いきなり鳴った! その時である。

ドウ――、ドウーン……

耳をうつ、天空のこえ。

これ、待ちに待った三番太鼓と知られたから、御岳広前の紅葉のあいだにまッ黒にうずくまっている数万の群集が一どきに、ワーッと声をあわせたが、さすが霊山の神前、ことに厳粛きわまる武神武人の大行事、おのずから人の襟をたださしめて、一しゅんののちは、まるで山雨一過して万樹のいろの改まったように、シーンと鳴りしずまったまま、その空気だけが冴えかえってきた。

と――。

美妙な楽奏が、ながれてくる。

あおいでみると、神さびた杉こだちの御山の、黒髪を分けたように見えるたかい石段のうえから、衣冠の神官、緑衣の伶人、それにつづいてあまたの御岳行人が白衣をそろえて粛々と広前へ降りてくる。

白木の祭壇には四方笹の葉がそよぎ、御霊鏡が、白日のように光っている。

伶人は座につき、白衣の行人はしろい列を壇の下へひらく。

ゆるい和笛の音につれて、笙、ひちりき、和琴の交響が水のせせらぐごとく鳴りかなでる。