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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

試合の前のうちあわせである。

徳川家からは五名の闘士の名をあげてきた。そして、勝ち抜きでは勝敗に果しがないから、おのおの一番勝負として、点数勝越しのほうのものが咲耶子の身を引きとるというやくそくを条件にかぞえてある。

「承知した」

もとより、こっちにも異議はなかった。

「では、試合にさきだって、伝令の者が、各所の溜りの人々へ、番組を予告するのが定例でござるゆえ、そちらの闘士をきめて、この下へご記名願いたい」

と、使者は、徳川家でえらびだす闘士の名をしるした奉書をそれへひろげた。

見ると、なんという皮肉。

ふつうの武技では、どういう敗辱をまねこうも知れずと、大久保長安らが、わざと相手をこまらそうとたくらんだ卑劣な心事があきらかに読めている。

なぜかといえば、その人選はとにかく、争うべき焦点にはこちらになんの相談もなく、こういう無類な部門分けをして、勝手な註文をつけてきたのである。

一番忍法  御方 隠密組 菊池半助

相手方     未定

二番遠矢  御方 河内流 加賀爪伝内

相手方        同

三番吹針  御方 宗門御抱老女 修道者