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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「おっと、そうはいっても、まだまだやっと勝負はこれで半分みち。あの額の縁に刺さッている矢を抜きとって、もとの試合場まで帰り着かねえうちは、まだほんとに勝ったものとはいえない」
つぶやきながら、大鳥居の上を見あげた。
それへよじのぼる気か、燕作が、ペタと蝉のように丸木の鳥居へ取ッついたが、待てよ、とすこし考えて――。
「こいつあ損だ、わりに合わねえ」
と不意にべつの矢をさがしはじめた。
上の額縁に刺さっている矢は、さいぜん、徳川家の射手加賀爪伝内がはなした遠矢で、かれも徳川方のひとりである以上、とうぜんその矢をぬいて、持ちかえるのがほんとなのだが、この登りにくい鳥居にかじりついてすべったり落ちたりしているよりは、どこか、そこらに落ちている山県蔦之助の矢をひろっていったほうが、時間においてはるかに得策だと、あいかわらずずるい考えを起したものなのである。
で、鳥居をくぐって、およそな見当のところをしきりにさがしはじめたが、さあこの矢のほうにも一難がある。
加賀爪の矢は的の中心にこそあたらなかったが、その額の縁へ適中したので、あのとおりあからさまに鳥居の上にとまっているが、的を射そんじた蔦之助の矢のほうは、それをそれたわけなので、どこまですッ飛んでしまったか、その距離と方角にいたっては燕作にもちょっと想像がつかない