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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

追いつめられた手長猿のように、蛾次郎のほうは、だんだん危険な枝へはいうつって、いくら竹童でも、もうここまではこられまいと安心していたが、ふいに、竹童の体重がおなじ枝へのしかかったとたんに――生木の股に虫蝕折れでもしかけていたのだろうか、ボキッと、あまりにもろい音がした。

かなり大きな枝であった。それが、ふたりの体とともに、ザーッとふかい樹間の空をおちていった。あッというまさえなく、すべては一しゅんのまに、思いきッた解決をとげた。

やがて、嵐弦の滝の深湍に、白い水のおどりあがったのが見えた。そして、しばらくは消えぬ泡沫の上へ、落葉樹の黄色い葉や楢の実がバラバラと降ってやまなかった。

二

山はまたもとの静寂にかえって、坩堝をでたような陽が、樹林の上の秋の自然をかがやき照らした。

ほどなくまた――そこへふたりの旅人が仲よく話しながらのぼってきた。ひとりは年配な女で、坂東三十三ヵ所を巡礼して歩くものらしく、ひとりは天蓋のついた笈を背負っている。

「山の道というものは、まようたらさいげんがない。もうこうなっては急がないことだ、そのうちにはだれか山家のものにゆきあうであろう。