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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

なんでちょっといってくるなんていうわけにいくものですか、だからつねづねわたしにも、お師匠さまの飛走の術をおしえてくださいともうすのに、いっこうおしえてくださらないから、こんな時にはこまってしまいます」

「なぜ口をとがらすか、けっしてむりをいいつけるのではない。それにはちょうどいい道案内をつけてやるから、和子はただ目をつぶってさえいればよい」

「へー、では、だれかわたしを連れていってくれるんですか」

「オオ、いまここへ呼んでやるから見ておれよ」

と果心居士は、露芝の上へでて、手に持ったいちめんの白扇をサッとひらき、要にフッと息をかけて、あなたへ投げると、扇はツイと風に乗って飛ぶよと見るまに、ひらりと一羽の鶴に化してのどかに空へ舞いあがった。

ア――と竹童は目をみはっていると、たちまち、宙天からすさまじい疾風を起してきた黒い大鷲、鶴を目がけてパッと飛びかかる。鶴は白毛を雪のごとく散らして逃げまわり、鷲のするどい爪に追いかけられて、果心居士の手もとへ逃げて下りてきたが、そのとたん、居士がひょいと手をのばすと、すでに、鶴は一本の扇となって手のうちにつかまれ、それを追ってきた大鷲は、居士の膝の前に翼をおさめて、ピッタリおとなしくうずくまっている。