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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

いつ頭領から籠城の用意をしろとおふれがでた。しかも、夜が明けしだいに、裾野へ討ってでるしたくのさいちゅうだわ」

「ならぬ! 呂宋兵衛さまから軍配を預っている、この昌仙がさようなことはゆるさぬ。七つの門は一寸たりともあけることまかりならんぞ」

「めくら軍師ッ。かしらの呂宋兵衛さまも帰らぬうち、洞門を閉めてしまってどうする気だ」

「いまにみよ、祈祷にでたものはちりぢりばらばら、呂宋兵衛さまも手傷をうけて命からがら立ちかえってくるであろうわ」

「ばかばかしい! そんなことがあってたまるものか」

と又八が大口をあいてあざわらっていると、折もおりだ。祈祷の列に加わっていった足助主水正と佐分利五郎次などが、さんばら髪に、血汐をあびて逃げかえってきた。

「やア、その姿は――?」

今もいまとて、強情をはっていた轟又八、目をみはってこうさけぶと、裾野から逃げかえってきた者どもは声をあわせて、

「一大事、一大事。まんまと敵の計略におちいって、頭領のご生死もわからぬような総くずれ――」

つづいて逃げてきた手下の口から、

「伊那丸じしんが先手となり、小幡民部が軍師となって、もうすぐここへ攻めよせてくるけはい」