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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「卑怯なやつら、臆病ぞろいよ! わずかふたりの敵をむかえることができぬのか、和田呂宋兵衛の下ッぱには男らしいやつは一ぴきもいないのか、くやしければ、開けろ、開けろッ!」
さんざんにいいののしったが、こッちでののしれば、内でもののしり返すばかり、果てしがないので、
「えい、めんどうだッ」
手馴れの禅杖を、ふりかまえた加賀見忍剣、どうじに巽小文治も、
「よし、拙者は、あれからとびこんでゆく」
と、槍を立てかけて、足がかりとなし、十数尺上ののぞき口へ、無二無三にとびつこうとこころみた。
グワーン!
たちまち、雷火をしかけたように、鉄門をとどろかした忍剣の第一撃! この鉄の扉が破れるか、この禅杖が折れるかとばかり。
つづいて、第二、第三撃!
間道門のなかでは、呂宋兵衛をはじめ丹羽昌仙、轟又八、そのほか燕作も蚕婆もおおくの手下どもも、思わず胆をひやして、ただ、あれよあれよとおどろき見ているまに、さしもの鉄壁も、飴のようにゆがんでくる。
すわこそ、人穴城の一大事となった。
呂宋兵衛はまッさおになった。
手下どもも、見えぬ敵の恐怖におそわれた。こんな猛者に、ふたりもおどりこまれた日には、よしや、城内に二千の野武士はあるとも、どれほど死人手負いの山をきずかれるか、さいげんの知れたものではないと思った。